大手ゲーム企業はどのように課金ユーザーをリターゲティングしているのか?
7月 18, 2022
モバイルゲーム部門における収益の見込みは広がり続けています。このトレンドは、新たなアプリが絶えず市場に参入し、人々の注目を集めようと争う中で競争の激化につながっています。
その結果、新規ユーザーを獲得するためのコストはさらに高くなってきています。業界で最も人気のあるサブカテゴリの1つであるカジュアルゲームアプリの平均CPI (Cost Per Install) が、このトレンドの根拠となります。 2020年から2021年にかけてのカジュアルゲームアプリの平均CPIは1.96ドルであり、2019年から2020年の数値と比較すると45%増加しています。
ここでは、Playtika社とScopely社をゲストスピーカーとしてお招きしたApptivateポッドキャストエピソードを再度取り上げ、成功を収めたゲーム企業がアプリの新規ユーザーを獲得した後に行っている施策をご紹介します。
初日からコネクションを構築
モバイルゲームスペースは、プレイヤーがディスクまたはカートリッジでしかコンテンツにアクセスできなかった古いコンシューマーゲームの概念をはるかに超えています。今日のゲーム企業は常にアプリの新機能を更新していますが、すべての企業がすぐにその情報をユーザーに伝えられるわけではありません。
Apptivateのエピソード28では、Playtika社のリターゲティング部門LeadのNadav Shalit氏とリターゲティングマネージャーのDani Magid氏が、彼らのリターゲティング戦略と、なぜアプリを開いた瞬間からオーディエンスと接触することが将来のアプリ内収益を生み出すために重要であるのかについて話しました。Magid氏は次のように述べています。
「リターゲティングアクティビティを設定するときに最初に確認するのは、ユーザーエクスペリエンスです。それがあなたとユーザーの間のつながりのすべてです。リターゲティングは方法 (how) だけでなく、タイミング (when) も重要です。インストール後、私たちは数日経ってからユーザーとコミュニケーションを取りますが、特定のアクティビティでは、インストールの翌日に『この機能をチェックしましたか?』という広告が表示されるように設定することがあります。こうして初日からコネクションを構築するのです。」
過去の課金ユーザーを最優先する
多くのゲームアプリにとって、一定期間非アクティブな状態の課金ユーザーへの投資は優先すべきセグメントです。このようなユーザーは当初、高いエンゲージメントを示し、課金したものの数日間アプリと接触していない状態です。 Apptivateエピソード89で、Scopely社のUAマネージャーであるStephen Siegel氏は、過去の課金者の重要性について彼の見解を以下のように述べました。
「離脱課金ユーザーはコアオーディエンスです。離脱課金ユーザーがどんなユーザーであるかを自問する際、ライフタイムバリュー (LTV) は、彼らがリアクティベートした場合のアクティビティがどのようなものになるかを示す非常に良いシグナルになります。どの企業にも収益目標がありますから、ある種の収益指標を基にオーディエンスを構築することは理にかなっています。」
膨大な数のモバイルゲームが市場に溢れているため、パブリッシャーは課金ユーザー層の大部分が離脱すると考えています。しかし、アプリに興味がなくなったユーザーをどのようにリエンゲージメントすればよいのでしょうか?ここでは、その方法を紹介しましょう。
課金ユーザーの離脱の原因を探る
自社のゲームアプリが多くの課金ユーザーグループを獲得し、その後ユーザーが離脱した場合、マーケターが最初に尋ねる質問は「なぜプレイヤーは離脱したのか?」ということです。
成功を収めているゲーム企業は、プロダクトチームと協力してこの疑問に答え、ユーザーのアプリ内行動に関連するデータ傾向を監視しています。これらのインサイトをリターゲティングパートナーと共有することで、ユーザーをアプリに呼び戻す手法の基礎が形成されます。
このプロセスでは、ユーザーのアプリジャーニーにおけるさまざまなポイントに注目します。
- 初日:
インストール直後のドロップオフ率が高い場合、アプリのオンボーディング体験(およびその改善方法)について多くのことがわかります。例えば、ユーザーはチュートリアルを始めたものの、最後までやり遂げることができなかったのでは?といった点。 - 7日目:
7日間プレイしたユーザーは、ゲームを楽しみ、すでにアプリ内課金を行った可能性があります。レベルクリアに失敗してプレイを止めたのか? - 30日目:
ロイヤルユーザーは、通常30日間を目安にプレイします。コインやジェムを使い果たしたため、興味がなくなったのか?
Scopely社のUAマネージャーであるStephen Siegel氏は、サブカテゴリーが極めて重要な役割を果たすと述べています。
「ゲームのジャンルにも大きく左右されます。外出先や空き時間に気軽にプレイするようなカジュアルゲームから、アクティブユーザーがほぼ毎日プレイするような本格的なゲームまであります。それにより、ユーザーへのメッセージの送り方が変わります。」
ゲーム内イベントと連動したリターゲティング施策の実施
プロモーションはユーザーエンゲージメントを促進しますが、モバイルゲーム業界における週単位または月単位の流れをすべて変えてしまうこともあります。ゲームアプリにとって、プロモーションのための適切なメッセージを探し出すことは難しいことです。RemergeのVP of SalesでApptivateのホストでもあるThomas Yannopoulosが以下で説明するように、マーケターが適切に行うべきことの1つとして挙げられるのは、リターゲティングアクティビティをゲーム内イベントと連動させることです。
「消費者とのギブアンドテイクが必要です。『ゲームタイトルAです。また遊びに来てくださいね』と言って、ゲームのロゴがあるだけでは不十分で、それだけでは意味がないのです。新しいキャラクターが登場するとか、ユーザーに合わせた特定のプロモーションがあるというメッセージが必要です。それがエンゲージメントを高めるための大きな要素です。」
« バランスを取りながら、一般的なゲームの経済性を損なわないようにすることが重要です。 »
Nadav Shalit 氏
価値の高いユーザーにインセンティブを与える
モバイルゲームのマーケターは、課金ユーザーに継続的に課金してもらえるよう、しばしば一線を越えることがあります。アプリに戻ってきてもらうための十分なインセンティブを提供しなければならない一方、ゲームの経済性を損ないたくはありません。
Playtika社のShalit氏は次のように説明します。
「もし対象がアクティブな課金ユーザーであれば、彼らの課金習慣を損ないたくないので、提供したいオファーを最小限に抑えるでしょう。しかし、特定の機能を開発し、離脱したユーザーが将来戻ってくると予測して導入したい場合は<より価値の高いインセンティブ>を提供することになります。バランスを取りながら、一般的なゲームの経済性を損なわないようにすることが重要です。」
なぜすべてのアプリがリターゲティング戦略を持たないのか?
リターゲティングキャンペーンよりもユーザー獲得キャンペーンを実行する方が間違いなく簡単です。なぜなら、ターゲット層やユーザーへのメッセージの送り方、ディープリンクの設定方法について多くの知識を得る必要がないためです。
ゲームアプリの主な障壁は、多くの場合、リターゲティングキャンペーンを開始するために必要なクロスコラボレーションと初期基盤です。たとえば、アプリのパフォーマンスマーケティングチームとデータチームは連携してアプリ内のアクティビティを追跡し、ユーザーの行動に関するより多くのインサイトを収集する新しいプロセスを確立する必要があります。また、コンプライアンスに準拠したファーストパーティデータ共有の適切な設定、キャンペーン指標とKPIの定義、およびクリエイティブアセットの準備のため、企業がベンダーと連携することも重要です。
リターゲティングキャンペーンを開始し、効果的に測定することは、アプリによっては大変な作業です。うまくいっているアプリは通常、マネージドDSPを選択しており、最も手間がかかる部分をパートナーが引き受けています。